東京高等裁判所 昭和59年(ネ)1238号 判決
一 当審において取調べた証拠を加えてした当裁判所の判断によつても、控訴人の被控訴人らに対する本訴各請求は理由がなくいずれも失当として棄却すべきものであり、被控訴人笠木節夫の控訴人に対する本訴請求は原判決が認容した限度において正当としてこれを認容しその余は棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか原判決の理由説示と同一であるからこれを引用する(ただし、原判決三一丁表一一行目の「排水板(18)」を「排出板(18)」と訂正する。)。
1 原判決三二丁表五行目「分割されていない。」の後に次のとおり付加する。
「右認定の本件特許発明の構成要件(1)によれば、本件特許発明の側部円筒体はローラの円筒面を円筒殻体とともに構成する円筒部を有するものであることが明らかであるのに対し、右認定の被控訴人装置の構成(1)によれば、被控訴人装置における側部支持体にはローラの円筒面を構成する部分がないことが明らかであるから、後者の側部支持体をもつて前者の側部円筒体に該当するということはできない。当審における控訴人の主張(一)は、前記本件特許請求の範囲に記載された本件特許発明の構成要件(1)を正しく理解しないものであつて採用するに値しない。」
2 原判決三二丁表六行目「本件明細書の」から同九行目「相違している。」までを次のとおり訂正する。
「前掲甲第一号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の項に、本件特許発明の側部円筒体及び円筒殻体について、「前記側部円筒体2は鋳鉄等でつくり、一方円筒殻体3は鋳鋼等でつくられる」(同号証三欄一六・一七行)、「ローラの一例をあげればローラ巾七〇〇mm、ローラ径四〇〇mm、円筒部肉厚八〇mmの鋳鉄製側部円筒体二個と肉厚三〇mm、巾三〇〇mmの表面チルド処理した鋳鋼製円筒殻体とを締着一体化し」(同四欄二八ないし三一行)との記載があり、また、「ローラ1、1´の中央における円筒殻体3、3´の表面が最も多く摩耗を受けるのであるが、この摩耗が甚しい場合円筒殻体3のみ交換することで支障なく稼働できるものである。」(同四欄二三ないし二七行)との記載があることが認められる。一方、成立に争いのない甲第六ないし第九号証によれば、本願出願前ロールクラツシヤー等のロール装置において、ローラの円筒面を一個の円筒体で構成しこれを支持体により回転軸に固定する技術は広く知られていたことが認められる。右事実と前示の本件特許請求の範囲の記載によれば、本件特許発明においては、周知のローラの円筒面を一個の円筒体で構成する構成を採用せずに、側部円筒体と円筒殻体を別部材とし、側部円筒体二個の間に一個の円筒殻体を介装締着し、その全体が一つの円筒面をなす一基のローラを構成することを必須の構成要件とし、この構成によつて、円筒殻体の摩耗が甚だしい場合側部円筒体を残存させ円筒殻体のみを交換することができるという作用効果を奏するものであることが認められる。
これに対し、被控訴人装置においてローラの円筒面が一個の円筒体により構成されていることは前示認定の被控訴人装置の構成(1)のとおりであり、その結果、本件特許発明の右作用効果を奏しないことが明らかである。
以上のとおりであるから、当審における控訴人の主張(二)は失当であり、被控訴人装置は、本件特許発明の構成要件(1)を充足しない。」
3 原判決三二丁裏五行目「主張するので、」から三六丁表七行目「採用できない。」までを次のとおり訂正する。
「主張する。しかしながら、前叙のとおり、被控訴人装置は本件特許発明の必須の構成要件(1)を充足せず、この構成に由来する作用効果を奏し得ないものであるから、被控訴人装置は付設事項の点を除いて本件特許発明と同一の作用効果を有する旨の控訴人の主張は理由がない。」
4 原判決三七丁裏六行目「主張は」の後に「当審における控訴人の主張(三)、(四)とともに」を付加する。
二 よつて、原判決は相当であり本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。